この宇宙次元に散らばる諸世界のなかに、セレンダイルとフォーテイルというふたつの種族が共存する世界がありました。
しかし、ふたつの種族はお互いの特性を生かして共存するというよりも、刃を交える形で接することが多かったのです。
水と陸の種族の戦いは永遠に続くとさえ思われていたのですが、果ての無い戦いはフォーテイル族が異世界から召喚したひとりの魔法使いによって一応の終焉を迎えることとあいなりました。
異世界人の魔法使いは、フォーテイル族の暮らす大地とセレンダイル族の住まう水の境にシャイアという金色のの草を編み出すことにより、両種族の領域に境界線を作ったのです。
金色のシャイアはフォーテイル族の上陸を決して許しはしませんでしたが、フォーテイル族にも代価を与えたのです。シャイアがこの世界に生まれてからというもの、フォーテイル族は日の光のもとにある水に触れることが叶わなくなったのです…
魔法使いは二種族の境界線の代価として、両種族に対して均等に痛みを背負わせることにしたのでしょうか?
それはこの世界の誰にもわからないことでした―
とはいえ、セレンダイル族は魔力に長けた種族です。
現在はシャイアの金色の輝きに阻まれて上陸を阻止されている彼らも、時が過ぎればいつまた陸を侵攻するかはわかりません。
ゆえに、ふたつの種族の間に境界線が敷かれてから千年が過ぎても、フォーテイル族はセレンダイル族への警戒を解くことはありませんでした。
フォーテイル族が国家を作っている大陸のひとつにヴェストゥールという名のものがありました。
ヴェストゥール大陸に暮らすフォーテイル族は都市国家連合体という形をとって国家を運営しています。
そうした都市国家のなかに、ディレイという街がありました。
ディレイは古く千年以上の歴史を持つ由緒ある街であり、街を治めているディアルド、クローナの両家もまた古い血統を誇る名家として大陸じゅうにあまねく知れ渡っているのです。
ふたつの名家が治める街は、歴史ある街に相応しい繁栄を誇っていました。
―今から2年前…
北方の学術都市シレギアのレーテ家からディアルド家に嫁した奥方ウィステリアが夭折するまでは…
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