翌日の休憩時間には出発までの間にアリステーゼは茴香と昴に約束したことを行っています。
現在は近隣の街から「ディレイの金髪の賢姫」として知られているアリステーゼも15歳になるまでは快闊な娘であっただけはあり、帯の使い方も手馴れていました。
セレシィア習ったのでしょうか、護身具としての使い方も理解しています。
アリステーゼの指導は帯の使い方に関してある程度の知識を持っているフォーテイル族の子供たちを相手としてのものであればおそらく順調にはこんだことでしょう。
しかし、飾り帯のような道具が存在しない世界から来た昴と茴香では事情が全く違います。
教わる昴たちも慣れない道具相手に悪戦苦闘していました。
一方、玲も剣や弓などだけではなく、帯の使い方もカリッツァに教わっていました。
実用とい面から考えれば男性用の帯の方が女性用の柔らかい材質のものよりも若干使いやすいとはいえ、やはりこうした道具を扱うという機会のない国で生まれ育った身である玲の方も状況は昴たちと似たり寄ったりです。
生活の場、舞いの舞台での小道具、護身具としてのちょっとした使い方だけをおぼえておけば問題がない女性たちとは異なり、玲は武器としての使用も併せて学ぶことになっているのですから状況としては同じ世界のふたりの娘たちとそう変わらないのでした。
この日の夜、宿の地下浴場で汗を流しえて部屋に戻ろうとしたカリッツァは同じく部屋に入ろうとした昴と目を合わせました。
「今日は手合わせに来なかったな。」
「だってあなたはわたしを本気で相手にする気はないのでしょう?」
「?」
「わたしを相手に手合わせをするとき、あなたは絶対に右手を使わないわね。
玲相手のときは容赦ないみたいだけど。」
「武器というものは弱い者を守るための道具であり、傷つけるために持つものではない。」
―君も女性のひとりだろう?―
カリッツァの瞳はそう語っています。
「それはそうだけど…
日本ではね、本気の者に本気で返礼しないのは失礼にあたるのよ。」
「わかった。
考慮しよう。」
「考慮って言っても―」
「今夜はもう遅い。
続きは明日だ。」
昴が「なんだかんだ言ってまた左手を使うんでしょう?」と言う前にカリッツァは自分の部屋に消えました。
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