このコーナーに足を運ばれた皆様は、1度は「守護聖人」という言葉を耳にしたことがあると思います。
実際、欧州世界などのキリスト教文化圏を考えるにおいては、この「守護聖人」というものは抜かして考えることが難しい存在なのではないでしょうか?
聖人に縁の日を記した聖人カレンダー、教会や街の名などにも見られる聖人たちの名前、そして現在にも残る各種の伝説、美術品…
聖書を読み解く時にもそれら聖人の存在に触れることがありますね。
−とはいっても、聖書のなかに直接かれら聖人が出てくるわけではありません。
聖書に直接関係しているようで、なのに肝心のその書物には書かれていない…
そんな聖人や聖女が、なぜ「聖書」や「キリスト教」に深い関わりのある存在として奉られているのでしょうか?

それはおそらく、キリスト教が欧州世界に根付くまでのプロセスが絡んでいるからではないのでしょうか?
欧州に限らず、キリスト教やユダヤ教などが生まれた土地でさえ、古くからの宗教形態―先祖霊や自然神、大地母神信仰などですね―とは全く違う一神教を根付かせるには、古くからの文化や宗教などとはかなりの苦難と軋轢があり、一神教の信徒は、布教の為に、時には少々強引な手段に出ざる得なかった―ということも伝えられているのです。
欧州世界もまた、遥か太古の時代の宗教形態は、他の諸文化圏と同様、多神教、もしくは大地母神を崇めるものだったのです。
そして、それぞれの国や民族が持つ信仰や神話は、かれらの過ごす土地の気候風土や歴史、そして民族性などによって相違がみられることがあるものの、往々にして、絢爛たる輝きに彩られた世界を持っていたのです。
それは、ギリシァ神話やケルト神話などを見ても容易に納得できますね。
キリスト教はそのような宗教形態を持つ欧州に入ってきました。
この新しい宗教が入ってきた頃の欧州はローマ帝国の影響下にあった時代です。
欧州キリスト教の初期の頃は、帝国の皇帝たちからも弾圧を受けることになってしまいます…
キリスト教が激しい糾弾を受けたのは、伝播先の異文化圏だけではありませんでした。
この宗教は、その母体となったユダヤ教からも異端視されており、双方の軋轢もなみなみならぬものだったともいわれているのです…
キリスト教徒の結束の強さの秘密は、こうした歴史の中にも隠されているのかもしれませんね。
話を欧州に戻しましょう。
ローマ帝国で、キリスト教がこれだけの弾圧を受けた背景は、先述の「多神教と一神教の軋轢」もさることながら、「すべての人間に愛と平等、そして罪の許しを説く」というキリスト教の根本理念や、「唯一の神のみを祈りの対象とする」という在り方などが、ときの権力者たちの思想にはあまり有難くないものに映っていたからでもあるのでしょう。
聖人たちの誕生 …欧州にキリスト教が根付くまでの長い時間の中には、当然、「偽りの神を崇めるよりも、真の信仰を守る」ことを選び、殉教する者もありました。
この殉教の風景は、時として、語ることさえ一瞬躊躇してしまうような凄絶なものもあったといわれています。
聖者たちが「より天国に近く、地上の人間と天上の神の間をとりもってくれる聖なる存在」といわれたかげには、こうした出来事もあるのでしょう。
―「人間の罪を背負って旅だったキリストの行為の再来」の意味合いもこめて…
聖者や聖女は、これらの事情と、キリスト教の伝播の為に生まれました。
キリスト教が欧州世界に入ってきた頃の欧州人たちにとって、この宗教はあまりにも地味で、現世利益などの見かえりに恵まれているとも言い難いものであったことでしょう。
確かに、聖書には「数々の罪の許し」「愛と平等」「生者の世界を生きる為の宗教」などの意味合いも隠されていますが、古くからの土着の神々が根付く土地に新しい宗教の息吹を伝えるには、それだけでは説得力に欠けていたのです。
「神々や英雄」に馴染んだ人々にとって、そうした存在とはあまり縁のない聖書の世界はどのように映ったことでしょうか?
つまり、聖書世界を、古くからの絢爛たる神話世界と隣り合わせに生きている人々に伝えるには、神話的な手法が欠かせなかったのです。
そこで布教者たちが目をつけたのが、信仰の為に生命をかけた殉教者たちや、教会の発展に尽力した功労者、そして教義に従った生涯を送った信者たちの存在です。
こうした人々を神話的に描いたことが、そもそもの「聖人・聖女伝説」のはじまりだったと伝えられているのです。
そうして誕生した「聖人・聖女の記録」からは、時代を経るに従って「殉教者暦(聖人カレンダーのようなものでしょうか?)」「聖者伝」「移葬記」「奇蹟録」などの「聖人文献」や、絵画や音楽などの美術品が生まれることになり、それらが一般化していくにつれて、キリスト教徒にも聖人や聖女がより身近なものになっていったのです。
聖人や聖女には、「守護の対象」となるものがあります。
これらは、かれら聖者たちに縁のエピソードなどから、幾つかのパターンをもって定められているのです。
☆ 殉教地や、その聖者にもっとも縁のある土地に絡むもの
☆ 殉教のエピソードに絡むもの
☆ その聖者の生き方や職種に絡むもの
☆ 伝説の中でもインパクトを持つもの
―といったかんじでしょうか。
1年365日の守護聖人をお知りになりたい方は、「365日の守護聖人」の小部屋に行ってみてくださいね。
当城に保管してある守護聖人カレンダーがあります。
注:ここに書いてあることは、わたしが読むことができた資料から得た印象や知識をわたしなりにまとめてみたものです。
なので、場合によっては記述内容に不足や誤り見られることがあるかもしれませんが、その点につきましては、皆様の御助言などをいただけると幸いに思います。